07/29 我儘の終着駅

あの日。

いや、その前日。
私達は会っていた。
二人ではないけれど、確かに会って同じ時間を共有して、人目を忍んでキスをした。


楽しくて、やっぱりどんなにワガママを言ってもあの人が好きで、腹を立ててたはずなのに顔を見ると笑ってしまうのだ。


翌日。

彼に私は前回の会う約束の埋め合わせの日にちを尋ねた。
私の予定を教え、彼の予定を聞いた。

休みが合えば会おう。
休みが合ったのは4回。

内の1回は元々私を含む大勢で会う日。

内1回は私より優先すべき人がいる。

内1回は私が予定が入ってた。

よってたった1回の休みの合う日を彼はくだらない理由で、けれどどうしようもない理由で断った。

また、私の我儘は頂点に上り詰める。
我儘?

埋め合わせを約束したのは貴方。
それを果たすよう要求するのは私の我儘なんだろうか。


貴方には1番がいるから、


私は約束を果たせない彼を責めることはできないのだろうか。


涙を隠そうとしたけれど、とめどなく涙は溢れ貴方を苛立たせる。


仕方ない。
別の日にみんなで会えるよ。
こういう奴って分かってたでしょ。
あの子は俺のために有休を使ってくれたから。


それが何。



自分でも驚くほどに冷たい言葉。


責めて、自分の言葉には責任を持て。
優先順位を考えて、人の気持ちを考えろとまくし立てた。


貴方は続ける。


だから最初からやめとけって言ったじゃん。



言われたよ。
こんな奴やめとけ、他を探せって言われた。
それでも気持ちは消えなかった。

消えなくてそばにいる私は、どんな不満を持つことも許されないのか。

罪をおかしてるから。


我慢しなければならないのか。


私には休みを取ることすらさせてくれないのにね。
前日に会えたのはさ、貴方が前に話してたの聞いててもしかしたら、と思ってわざと休みとったんだよ。


貴方は知らないでしょ?



貴方が狡いということは知っている。


隙を付いて、触れる距離まで近付いてこちらを伺う。
こちらが手を伸ばしたら、僕のことはやめなさい、僕はそんな価値のある人間じゃない。

それでもこちらが手を引かずにいると、彼は自分の胸に引き寄せる。


まるで、何か契約を交わしたような。



私は馬鹿だけど何も考えずに結果論だけを疑問に思うような馬鹿ではない。

わざと、疑問をぶつけ取り繕われるのを待っている。


けれど、貴方は。


君は僕に入り込みすぎる。
僕の予防線を越えてくる、これ以上は傷付くからやめておけと、警告を出しているのに何故それを言葉にさせるのだ。


気持ちを考えられないのは君のほうだよ。


と、貴方は今までにない冷たい言葉を私に浴びせた。


きっと、彼は今。

私を傷つけようとして傷付く言葉を選んで私に放っている。


それにまんまと傷ついた私は彼の手を放した。



我儘の終着駅は破滅。
もっともっと、笑っていたかった。
楽しく過ごしたかった。


けれど、彼はそうとは思えないと言った。


私は彼から離れることを望んでいたのだろうか。

きっと違う。


1番に、唯一無二の存在になりたかったわけでもない。


彼が安心して笑えるような、心の拠り所になりたかった。


都合の良い女にもなりきれなかった私は、糸も簡単に離脱するのでした。


傷つけるような言葉を言わせてごめんね。

ごめん、


好きだよ。

好きだったよ。


とっさに手を放してごめんね。


うん。


好きだった。